ヒロ動物病院|金沢市|がん・腫瘍・CT・外科手術

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2024 / 06 / 26  14:23

犬の膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)

*手術中の写真がありますので、苦手な方はご注意ください。

―膝蓋骨脱臼とは―

膝蓋骨脱臼は膝の前にある平たい骨で、通常は太ももの骨(大腿骨)にある溝にはまっています。

膝蓋骨は、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)とスネの骨(脛骨)と繋がる靭帯(膝蓋靭帯)にくっつき、膝を伸ばす働きをしています。

膝蓋骨脱臼とは、膝蓋骨が大腿骨の溝から外れてしまう事を言い、小型犬である、トイプードル、チワワ、ポメラニアンなどに発症することが多いです。今回は膝蓋骨脱臼の症状や治療法、予防などについてご紹介します。

 

模式図.jpg

―原因―

骨や筋肉の成長異常により起きるもの、交通事故や転倒による外傷によるものなどがありますが、多くの原因は前者であると言われています。

 

―症状―

症状は様々ですが、代表的なものは以下のようなものです。

・足を痛がる

・時々、もしくは日常的に足をあげる

・スキップするような歩行をする

・歩くことができない

・段差を前にした時に躊躇する

・足を伸ばすことができない

 

しかし、膝蓋骨脱臼のグレードが3や4に進行してしまうと、上記のような症状が見られなくなる場合があります。(グレードの詳細については次の項で記載しています)。症状がなくなったからと安心せず、一度検査することをオススメします。

 

―検査方法—

検査方法は触診とレントゲン検査の2つがあります。

 1.触診

膝を触り、膝蓋骨脱臼のグレード分類を行います。

グレード1:膝蓋骨を手で圧迫することで脱臼するが、圧迫を解除すると正常な位置に戻る状態。

グレード2:膝蓋骨は足を曲げると脱臼するが、膝を伸ばすと正常な位置に戻る状態。

グレード3:膝蓋骨は常に脱臼しているが、手で圧迫すると正常な位置に戻る状態。

グレード4:膝蓋骨は常に脱臼しており、手で圧迫しても正常な位置に戻らない状態。

 

2.レントゲン検査

レントゲンを撮ることにより、膝蓋骨の脱臼や、また脱臼により関節炎や関節の骨や軟骨が変形していないかなどを確認します。

下のレントゲンの写真では、右後肢の膝蓋骨は正常な位置にありますが、左後肢の膝蓋骨(白矢印)は内側に脱臼していることが分かります。

レントゲン写真.jpg

 

―予防—

膝に負担がかかることは、膝蓋骨脱臼が生じるリスクとなります。このリスクを減らすために、ご自宅でできる2つのことを紹介します。

 1.環境改善

滑りやすいフローリングは避け、マットや絨毯などをひいて滑りにくくすることで、横滑りすることを防ぎましょう。

 

2.体重管理

肥満は膝への負担を大きくするので、適正体重を維持していきましょう。

 

―治療法—

治療法は大きく分けて、保存療法と外科療法の2つあります。

 1.保存療法

膝蓋骨脱臼の一時的なグレード進行が見られた場合には、膝への負担を減らすことをします。

具体的には、予防法で述べた環境改善や体重管理を行い、ジャンプやくるくる回る動きも避けるようにします。また、痛みを伴う場合には鎮痛剤を使用する場合もああります。

 

 2.外科手術

保存療法を行っても症状が続き、日常生活に支障をきたす場合や、グレード3以上である場合、また前十字靭帯断裂が併発している場合には外科手術が適応になります。

手術法には膝蓋骨を正しい位置に調整する方法(内側支帯解放術、外側支帯縫縮術)や、大腿骨の溝を深くして膝蓋骨が外れにくくする方法(滑車溝形成術)などがあります。これらの手術により、膝が正常に機能するようにします。下の写真は、実際に行った大腿骨の溝を深くする手術(滑車溝形成術)の写真です。左の写真は処置前、右の写真は処置後を示しており、処置後は溝(白矢印)が深くなっています。

滑車溝形成術.jpg

―最後に―

膝蓋骨脱臼は一生の付き合いになることもあります。膝蓋骨脱臼を放置してしまうと、関節炎が生じてしまったり、前十字靭帯断裂を引き起こしたり、関節の骨や軟骨に異常が認められることがあります。当院では膝蓋骨脱臼の手術を多数行っておりますので、もし膝蓋骨脱臼の治療や手術でお悩みでしたらご相談ください。

2024.09.08 Sunday