犬の乳腺腫瘍は乳腺細胞が腫瘍化して起こる雌犬において発生する確率が高い腫瘍です。
発症年齢の平均は10歳~11歳で4歳以下の発生は稀とされています。
はっきりとした原因はわかっていませんが、避妊手術を早期に行うことで乳腺腫瘍の発生率が低くなっていることから
卵巣から分泌される雌性ホルモンが大きく関わっているのではないかといわれています。
犬の乳腺腫瘍は悪性と良性に分かれ良悪比率は50%とされており
一般的に良性のものは小さく円型で硬く触れることが多く、一方悪性のものは増大傾向が強く、皮膚や下層組織への固着、潰瘍や炎症を伴うことがあります。
ただし悪性のものでも成長速度が遅いものや硬いものもあり、経過や見た目だけで良性か悪性かの判断をすることはできません。
- 左側第4乳腺に発生した乳腺腫瘍
診断の流れ
腫瘍の成長速度や性状はそれぞれで違ってくるため、今の様子、避妊歴を含む病歴の聴収をし、一般身体検査として触診によりしこりの位置を確認します。
そしてそのしこりが乳腺にあるのかどうかも確認します。
乳腺腫瘍以外の悪性腫瘍除外のために細胞を採取して顕微鏡で観察する細胞診を行う場合もあり、最終的には摘出後病理組織検査により確定診断をします。
治療
治療の第一選択は腫瘍の外科的な切除です。乳腺腫瘍は悪性のでも早期に手術ができれば根治の可能性が高い腫瘍です。術式には腫瘍のみを小さく切除するものから両側乳腺を広範囲で全摘出するものまであり、腫瘍の悪性度、ステージ、腫瘍の数、年齢や一般状態を考慮してご家族と相談しながら術式を決定します。
そして摘出組織による病理組織検査で悪性か良性かなどの確定診断を行います。悪性度が高い場合や進行状態によっては術後に補助的な化学療法を行うこともあります。
- 右第4,5乳腺間に発生した腫瘍の切除手術前
予防
犬の乳腺腫瘍は避妊手術を早期に行うことで発生率が減少していることが知られています。
避妊手術を初回発情前に行うと乳腺腫瘍の発生率は0.5%ですが、初回発情後では8%、2回以上の発情後では26%にも上昇します。
しかし2歳半をこえて避妊手術をしても予防効果は、ほとんどないとされています。
早期に発見するには日頃から愛犬を抱っこしたり、乳房あたりを気にして触れてみるもの大切なことです。
特に初期では悪性のものでも痛みや不快感を伴わず元気、食欲に変化がないことがほとんどです。
いつもと違う感覚はあるけれど、元気があるから大丈夫。と思ってもわんちゃんにとっては大事なサインかもしれません。
早期発見のために、小さなことでも気になることがあれば早期の受診をお勧めします。