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病気・症例紹介

CASE

2024.10.17
犬と猫の歯周病

今回はワンちゃん、ネコちゃんのお口のトラブルのうち、動物病院でよく遭遇する歯周病について説明します。

歯周病とは

歯周病は中高齢のワンちゃんやネコちゃんに多い疾患です。

歯周病は歯垢(プラーク)の中の細菌が原因となり、歯を支えている歯槽骨(しそうこつ)や歯肉などに炎症が生じる疾患です。

軽度であれば歯の周りの歯肉に赤みがみられる程度ですが、歯周病が進行すると歯槽骨が溶けて歯を失ってしまったり、鼻と口を分けている骨が溶けて貫通したり(口鼻腔瘻:こうびくうろう)、歯の根っこの周囲にたまった膿が顔の皮膚を破って出てきたり(外歯瘻:がいしろう)することもあります。

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Veterinary information No.19 2017より抜粋・一部編集

 

歯周病の症状

歯周病が軽度の段階では、ワンちゃんやネコちゃんは明らかな症状を示さないことが多いです。日頃から口の中を見るようにし、歯肉の赤みや歯石の程度に変わりがないか気を付けるようにしましょう。

歯周病が進行してくるとワンちゃんやネコちゃんは口の中に痛みを感じるようになり、それに伴って症状が強く出るようになります。ご家族が気づきやすい歯周病の症状には以下のようなものがあります。

  • 口を触られるのを嫌がる
  • ごはんを食べにくそうにする(食事量が減った)
  • 口をくちゃくちゃする
  • 涎(よだれ)が多い
  • 歯がぐらぐらしている
  • くしゃみや鼻水、鼻血が出る

これらの症状を示している場合は口の中が痛い可能性が高いです。日頃からワンちゃんやネコちゃんの様子を確認し、痛みを示すサインに気づいてあげましょう。

歯周病の治療

歯周病が軽度の場合は、スケーリング(歯垢や歯石を専用の器具で除去すること)や、家でのデンタルケア(歯みがき)をすることが治療となります。

歯周病が重度の場合は抜歯が治療の第一選択です。抜歯を含めた歯石除去などの治療を行う際には全身麻酔が必要となります。

歯周病は軽度のうちに治療をしておくことが大切です。悪化してしまうとワンちゃんやネコちゃんが痛い思いをするだけでなく、歯を失ってしまうことがほとんどです。【症状】の項目で述べたように、軽度の場合は症状を示さないことが多く、気づかないうちに歯周病が悪化してしまっているケースが多々あります。定期的に病院で口腔内の状態をチェックしてもらい、早めの治療を心がけましょう。

歯石が付着した歯

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歯石を除去したあとの歯

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無麻酔での歯石除去は推奨されていません(アメリカ獣医歯科学会・日本小動物歯科研究会参照)。その理由として以下のようなことがあげられます。

  • 歯周病の進行部位である歯周ポケット内を無麻酔で清掃することが困難(人はじっとできるので可能ですが、ワンちゃんやネコちゃんはどうしても動いてしまいます)
  • 目に見える範囲の歯石をとるだけでは治療として不十分
  • 見た目だけがきれいになり、歯周病の進行に気づきにくくなる
  • 歯石を取り除く際にワンちゃんやネコちゃんが動いてしまい、口腔内を傷つけてしまう危険性がある
  • 無麻酔での処置で我慢を強いられたワンちゃんやネコちゃんが、その後ホームデンタルケアなどで口周りを触られることを一層嫌がるようになってしまう

 

抗生剤を使用することで歯周病の痛みをある程度和らげることができることがありますが、継続的に抗生剤を使用することは耐性菌(抗生剤が効かない細菌)が生じる危険性があるので推奨されません。

歯周病の予防

歯周病が軽度の場合は症状が無いことが多く、ご家族も気づきにくいです。歯周病の進行を予防するためには、日常的なホームデンタルケアが大切です。

今までデンタルケアをしたことのないワンちゃんやネコちゃんにいきなり歯磨きシートや歯ブラシを使用するのは難しいことが多いです。まずは口を触られることに慣らすことから始めてみましょう。

人間と同じく、デンタルケアは生涯続けていきたい習慣です。最初に「嫌なこと」と思われてしまうと継続は困難になってしまいます。焦らず、時間をかけて「良いこと・楽しいこと」と思われるように練習していけるといいですね。

また、当院には口腔内ケアのサプリメントもありますので、興味のある方はお尋ねください。

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