今回は犬の皮膚病の中でも特によく見られる「膿皮症(のうひしょう)」という病気についてご紹介します。
膿皮症とは?その原因は?
犬の皮膚に常在する細菌(主にブドウ球菌)が表皮や毛穴に炎症を引き起こす皮膚病です。
詳しい病態については解明されていませんが、皮膚のバリア機能が低下することが原因と考えられています。
発症する犬の多くは、皮膚のバリア機能を低下させる何らかの素因や基礎疾患をもっていると考えられ、その原因が改善されない限り治療が困難となったり、再発してしまう可能性があります。
皮膚バリア機能が低下する原因
若齢犬、高齢犬ではその原因もそれぞれ異なります。
若齢犬
- 遺伝的要因
- アレルギー性皮膚炎
高齢犬
- 病気
- 加齢
- 環境の変化(ストレス、食事の変更など)
膿皮症になるとどうなる?
以下のような症状がよく見られます。
- 皮膚が赤くなる
- ニキビのようなブツブツができる
- フケやカサブタができる
- 脱毛が見られる
- 痒がる
▲赤みを伴うカサブタが認められます。
膿皮症の検査
皮膚押捺検査により顕微鏡下で皮膚での細菌増殖を確認します。
症例によっては、膿皮症以外の皮膚疾患が併発していないかを確認するために他の検査も組み合わせます。
▲ブドウ球菌と好中球(炎症細胞)が多数認められます。
膿皮症の治療
基本的には抗菌治療が重要です。抗菌治療は外用療法(クロルヘキシジンスプレー、マラセブシャンプーなど)か全身療法(内服薬)に分類されます。
基本的に菌が増殖している場所は手が届く場所なので、外用療法による治療が重要で、全身療法よりも効果が安定しやすいです。
それでも外用療法の実施が難しい、効果が乏しいといった場合には内服薬を使用します。
再発予防としては、皮膚のコンディションを保つためのスキンケアや、基礎疾患がある場合にはそのコントロールをしていくことが重要となります。
症例紹介
- マルチーズ男の子
- 下腹部の膿皮症に対して治療を実施。
治療前と治療後の写真
治療により皮膚の赤みや脱毛が改善し、毛並みの状態も良くなりました。
最後に
膿皮症は、飼い主様が日々観察してあげることで比較的気付きやすい病気です。
早期発見のためには日頃からの愛犬とのスキンシップ、再発予防としては日頃のお手入れやシャンプーも大切です。
しかし、シャンプーによる洗いすぎは皮膚の乾燥をまねき、かえって皮膚炎発症の原因になってしまうこともあります。適切なケアの仕方や、使用する外用剤の種類はそれぞれ異なります。
愛犬のスキンケアについて、興味をお持ちになった方は当院までお気軽にご相談ください。