気を付けていても起こってしまう、そして時には命に関わる可能性があるのが「異物誤飲」です。
今回は異物誤飲について、また当院で行っている検査や治療法についてご説明します。
異物誤飲とは?
異物誤飲とは、靴下やおもちゃといった食べ物以外のものを食べてしまうことを指します。玉ねぎやチョコレートなど、犬や猫にとって害のある食べ物を食べてしまうことで起こる「中毒」については、別の記事で紹介したいと思います。
異物がそのまま便とともに排泄されればいいのですが、異物の大きさや形状、材質によっては胃の中に留まり続けたり、腸閉塞を起こしてしまったりする可能性があります。
特に飲み込んだ異物によって胃腸に穴が開いてしまった場合は命に関わることがあります。
ちなみに、異物を飲み込んでから数時間以内であれば異物は胃の中にある可能性が高く、うまく腸管内を流れてくれれば半日~二日ほどで排泄されます。
異物誤飲の症状
異物が胃にとどまっている場合、少し食欲が落ちたり、嘔吐したりすることもありますが、無症状のことが多いです。
胃から腸に異物が流れ、腸(特に小腸)で詰まってしまった場合は、元気や食欲がなくなる、嘔吐が症状として出てくることがほとんどです。特に異物が完全に腸を塞いでしまっている場合、水を飲んでも吐いてしまうことが多いです。
異物誤飲の検査方法
エコー(超音波)検査
当院では診察室にエコーの機械を置いているので、誤飲が疑われる場合はその場でエコー検査を行います。胃や腸の中に不自然な陰影が見えないか、胃腸の構造に異常はないかなどをチェックします。
- 当院で使用している機器
レントゲン検査
石や骨、金属などの物質はレントゲンで見つけることができるので、もしこれらの材質のものを食べたことが分かっていればレントゲンを撮ります。プラスチックや布などはレントゲンには映らないので、エコー検査で見つけることになります。
内視鏡検査
エコー検査やレントゲンを行っても異物の存在が不確かな場合は、全身麻酔をかけた上で口から内視鏡を入れて異物を探します。見つけた場合はそのまま内視鏡で異物を取り出す処置に入ります。
- 当院で使用している機器
異物誤飲の治療方法
催吐処置
エコー検査などで胃の中に異物があることが分かった場合は、吐かせる処置を行います。ただし、大きすぎるものは吐かせることができませんし、針や竹串などの先がとがっているものや電池などは食道を傷つける危険性があるので吐かせる処置はおこないません。
内視鏡
吐かせることができない場合、全身麻酔をかけた上で口から内視鏡を入れて異物を取り出します。異物の大きさや形状により取り出すことができないと判断した場合は次の開腹手術に進みます。
↑クッションの素材となるウレタンです。猫ちゃんが細かく噛みちぎって飲み込んでいたので、一つずつ内視鏡で取り出すことが出来ました。
開腹手術
全身麻酔をかけてお腹をあけ、胃または腸を切開して異物を直接取り出す手術です。
↑胃から腸にかけて詰まっていた布製品を、お腹を開けて取り出しました。この子はダックスフンドでしたが、これだけ長くても飲み込めてしまいます。
↑卵パックのテープが腸に詰まっていました。猫ちゃんがじゃれている間に飲み込んでしまったようです。
異物誤飲はいろいろなものに興味を示す若齢の犬や猫でみられることが多いですが、成熟した犬や猫でも起こることがあります。
犬や猫が異物を誤飲したときは、できるだけ早く来院してください。