潜在精巣の症例紹介です。
今回の症例は6か月齢のころに潜在精巣で手術をした子です。
若いうちの手術ですので特に症状はありませんでした。
多くの場合は子犬のワクチンや初回の狂犬病予防注射などで小さいうちに何度か動物病院に通ううちに身体検査で発見されます。
今回の子も初めて病院に来た時から陰嚢の中に精巣が触知できませんでした。その後も何度か身体検査をしても陰嚢内に触知することはできませんでした。
そこで『潜在精巣』と診断し手術適期である6か月になるまで待ちました。
手術前に精巣の停留部位が鼠径部(後肢の付け根)か腹腔内かを診断します。
診断法としては触診、超音波検査があります。
鼠径部の潜在精巣は触診でわかることも多いのですが、鼠径部は皮下脂肪が多い場所でもあるのではっきりと診断できない場合があります。
そこで活躍するのが超音波検査です。
画像の中央部にある低エコー(周囲と比べて黒い)のものが精巣です。
周囲の臓器や構造物を見ながらどこにあるのかを診断します。
今回は超音波検査により腹腔内の潜在精巣と診断しました。
停留部位により手術法が異なります。今回は腹腔内でしたので開腹手術になりました。
陰茎の脇を切開して腹腔内にアプローチします。
右側の写真は今回の症例とは違う子のものですが摘出後の精巣です。片側の潜在精巣だったのですが左右の精巣の大きさが違うのがわかると思います。
潜在精巣では異常な温度環境のため正常な発育ができず小さくなってしまうことが多いです。
潜在精巣はすぐに命に関わる病気ではなく特に症状もないことが多いですが、将来的に腫瘍化するリスクも高いので早めの手術をお勧めします。