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病気・症例紹介

CASE

2024.10.17
潜在精巣

今回は犬と猫で腹腔内潜在精巣の症例が続きましたので潜在精巣について書いてみます。

潜在精巣(陰睾・停留睾丸)は片側または両側の精巣が陰嚢内に下降してない状態の事を示します。他の動物種と比べ犬で多い疾患です。

胎児のころはオスの精巣もメスの卵巣と同じように腎臓の後ろにあります。これが成長に伴いお腹の中から鼠径管を通って陰嚢内におさまります。これを精巣の下降といい、動物種により異なりますが胎児期から生後間もなくの間で起こります。犬では他の動物種と比べて遅く、生後30日以降、大型犬では2か月以上かかるケースもあります。猫では生後20日頃に起こります。

精巣が停留する場所は鼠径部の皮下もしくは腹腔内で犬では両側性よりも片側性、左側よりも右側、腹腔内よりも鼠径部での停留が多いことが知られています。

 

原因としては解剖学的要因(精巣を陰嚢内に牽引する精巣導帯の発達不全や鼠径管の閉鎖)や内分泌学的要因(胎児期の性ホルモン不足)などが考えられていま

潜在性精巣は腫瘍化しやすいことが知られています。精巣は体温よりも2~3℃低い温度で正常に機能します。陰嚢内にあり体から少し離れることで体温より少し低い温度を保っていますが、潜在精巣はそれができないため常に体温と同じ温度になってしまい、精巣にとっては異常な高温状態となってしまいます。
この異常な高温状況が腫瘍化に関連していると考えられます。また精巣が腫瘍化すると性ホルモンの過剰分泌により貧血や雌性化などの様々な症状が発現することがあります。

  • 右側鼠径部の潜在精巣が腫瘍化し巨大化した症例

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  • 雌性化し腫大した乳頭

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また、潜在精巣では精子形成能も低下または欠如しており、遺伝することも知られてため、通常は繁殖の対象から除外されます。

 

治療は精巣摘出になりますが、停留する部位により切開する場所など手術手技が異なり、腹腔内の潜在精巣では開腹手術が必要となります。
潜在精巣の手術自体は腹腔内でも鼠径部でも難易度が高いもではないのですが、精巣が腫瘍化して大きくなったり、癒着を起こしていたり、ホルモンの影響により全身状態が悪化していると手術のリスクが高くなります。

当院でも潜在精巣と診断した場合、早めの手術をお勧めしています。